今回は、富岡博士作詞・作曲の合唱曲「ぼくらの世界」についてご紹介します。「ぼくらの世界」は、1998年に発表された曲で、さあ行こう 風にのって はるかな明日を目ざし 走って行こう 君といっしょに というフレーズで始まります。この曲は、自分たちの未来に向かって進む勇気と希望を歌った曲で、明るく爽やかなメロディと力強い歌声が印象的です。この記事では、「ぼくらの世界」の歌詞と楽曲の解説を行い、歌い方のコツと魅力をお伝えします。ぜひ参考にしてください。
曲の概要と歌詞の要点
曲名:ぼくらの世界
さあ行こう 風にのって はるかな明日を目ざし
作詞・作曲: 富岡博志(とみおかひろし)さん
1962年生まれ、2010年没の日本の作曲家です。日本大学芸術学部音楽科卒業後、東京都で中学校教員として勤務しながら、中学生を対象にした合唱曲の定番といえる作品を多数制作しました。代表曲は『明日へ』『南風』など、多くの人が合唱コンクールで聞いたことのある、さわやかながら力強い曲を多く作曲しました。
歌詞の要点:
この曲は、自分たちの未来に向かって一緒に走っていこうという前向きなメッセージを歌っています。風や波や木々など自然の要素が多く登場し、自由で広い世界を感じさせます。また、友だちや仲間との絆や思い出も大切にしています。最後には「生きている」「生きていく」という力強い言葉で締めくくります。
主な詩の表現技法:
反復:
この曲では、同じ言葉やフレーズが何度も繰り返されています。例えば、「さあ行こう」「はるかな」「走って行こう」「ぼくらの世界へ」「果てしなく広い宇宙」「青い星”地球”の上」「生きている」「生きていく」などです。これらの反復によって、歌詞の主題やテーマが強調され、聴き手に印象付けられます。
対句:
この曲では、二つの言葉やフレーズが対になって並んでいます。例えば、「風にのって」「歌にのって」「波の音 ぼくを誘い」「風の音 ぼくを呼ぶよ」「空を飛ぶ鳥のように」「今 ぼくも旅立つんだ」などです。これらの対句によって、歌詞にリズムやバランスが生まれ、美しさや調和が感じられます。
擬人法:
この曲では、自然の物や現象が人間のように感情や行動を持っているかのように表現されています。例えば、「波の音 ぼくを誘い」「風の音 ぼくを呼ぶよ」「緑の木々も ぼくを待ってる」などです。これらの擬人法によって、歌詞に生命感や親しみやすさが与えられます。
表現技法のまとめ:
この曲では、表現技法が効果的に活用されています。反復はメッセージやテーマを強調し、対句はリズムやバランスを生み出し、擬人法は生命感や親しみやすさを与えます。これらの技法は、歌詞が伝えたい内容や感情を聴き手にわかりやすく伝える役割を果たしています。
メッセージやテーマの意味:
この曲のメッセージやテーマは、自分たちの未来に向かって一緒に走っていこうという前向きな姿勢や、自然や仲間との絆や思い出を大切にする気持ちです。この曲は、中学生を対象にした合唱曲として作られましたが、中学生だけでなく、どんな年代の人にも共感できる普遍的なテーマだと思います。この曲は、自分たちの人生を楽しく生きるために必要なことを教えてくれるような曲だと感じます。
歌い方のコツ
「さあいこう」歌いはじめの「さあ」は息をまぜて「S」の子音をはっきりと。「いこう」の「こう」の下の弧線は「こお」と発音しましょう。何も意識していないとこのあとすぐに息を吸ってしまうので、(V)の記号か休符のあるところ以外、ブレスをしないように気を付けましょう。「はるかな」の「は」も口を大きくあけて息をまぜて「H」を発音することで、言葉の頭をはっきりと聞かせられるようにしましょう。
「なみのおと~」「かぜのおと~」詩の表現技法では対句になっていますね、音楽も『問いと答え』『呼びかけと応答』になっていることが多いです。関係性を音楽で表現できるように、音色を先に歌う男声の雰囲気に、次に歌う女声が揃えられると良いですね。
最初の「そらをとぶ」かなり音が跳躍(低い音から高い音に移動)しているので、最初から高い音に照準を合わせて準備をしておかないと、「そらを」の「を」でのどが閉まります。練習の際には、「をとぶ」だけでまず練習をして「そら」をくっつけて歌うといいです。「とりのように」は「い」の母音が多いので、のどが閉まりやすいです。なるべく口を横に広げたくないところですが、「い」の発音の際に口を横に引いたあとは、口をすぐにたてに戻すことで、のどを開けられるように気を付けましょう。「いま」ははっきりと発音しましょう。合唱曲で「今」と発音する時は力強い場面が多いです。弱弱しい表現にならないようにしましょう。
「ぼくら」の「ぼ」を発音する時は唇を巻いて、はっきり発音すると言葉がよく聞こえます。クレシェンドしています。最初のブレスが大切です。深く息を吸って「生きている」の手前の四分休符に照準を合わせてだんだん強くしていきましょう。
こちらもブレスが大切ですね。合唱で大切なことは、ブレスは決めたところですることです。「せかいへ」の「へ」は6拍伸ばしますが、7拍目にあたる四分休符の頭まで伸ばす意識で歌いましょう。ただ、次に強弱がmfになります。四分休符で切り替えてf→mfの差を工夫するのか、「せかいへ」で少しずつ減衰してmfになっていくのか、全員で相談できると良いですね。
この曲のまとめになります。どちらも「い」の母音から始まるので、「い」の口の開き方を続けるとのどの閉まった声になってしまいます。「い」を発音したら、すぐに口をたてにしていきましょう。「いきていく」の「いく」がのどが閉まってきれいに聞こえないときは、「ゆく」と発音することも検討していきましょう。